お得な商工会議所の保険制度についてご紹介します。
日本商工会議所では現在、会員企業へのサービス拡充を目的に、各地商工会議所を通じて「ビジネス総合保険制度」「業務災害補償プラン」「海外展開サポートプラン」「情報漏えい賠償責任保険制度」「中小企業PL保険制度」「休業補償プラン」といった保険を取り扱っています。
各制度とも中小企業者が抱えるリスクを簡便な事務手続きかつ低廉な保険料でカバーできる、まさに中小企業のための制度となっています。
これらの保険制度について一部紹介します。
<業務災害補償プラン 賠償金は増加傾向に>
●厳しく問われる労務管理
過労死を巡る裁判で、従来より企業や経営者の責任を明確にする判決が増加しています。平成27年12月に改正労働安全衛生法が施行されるなど、従業員の労務管理について、企業側の対応がこれまで以上に問われています。
業務災害補償プランは、従来型の負傷型労災といわれる業務中のけが、および労働災害の責任が企業にあると法律上判断された(例えば安全配慮義務違反を問われた)場合に発生する、企業の損害賠償責任(賠償金など)に対応する制度です。
労働災害が発生し、労働者が死傷すると、企業には一般に次のような法的責任が発生します。
①民事責任
使用者に安全配慮義務違反あるいは過失などがあれば、被災労働者またはその遺族から民事上の損害賠償を請求されます。この場合、業務に起因する災害であれば、労災保険による労災が給付されます。
②行政責任
労働基準監督署長から作業停止処分、建物などの使用停止処分などを受けます。建設業者の場合、業務停止処分や公共工事の指名停止処分などを受けます。
③刑事責任
業務上過失致死傷罪あるいは労働安全衛生法違反などの責任を問われます。
④社会的責任
マスコミによる報道などにより、取引停止など社会的信用を失います。
●民事責任に対応
業務災害補償プランは、この4つの責任のうち、①民事責任すなわち、使用者責任を補償するものとなっています。
労働者が業務中に負傷するなどの労働災害が発生した場合、使用者(経営者)は労働者またはその遺族から民事上の損害賠償を請求されます。損害賠償には、主に治療費(死亡・後遺障害の場合は逸失利益)や休業損害、慰謝料、弁護士費用などが含まれ、労働者が死亡した場合、企業の民事賠償責任が5000万から1億円を超えるような高額になるケースがあります。そして、その額は上昇傾向にあります。
一方、損害賠償金を支払えなければ、事業継続が不可能になることもあり、その場合、これまで雇用していた多くの労働者も路頭に迷うことになります。
本プランは、業務上の事故による死亡・後遺障害・入院・手術・通院はもちろん、法律上の損害賠償責任を負うことによって被る損害をカバー。事業継続の大きな一助になるといえます。
また、前述のような新しい企業責任(安全配慮義務違反などによる企業の法律上の賠償責任)のほか、例えばうつ病などの精神障害による「過労自殺」「過労死」が原因で認定された労災など、法律上の企業責任(民事賠償金)を問われた場合の慰謝料や訴訟費用(弁護士費用など)も対象になります。
●「心の病」対策の義務化
平成27年12月に施行された改正労働安全衛生法では、「ストレスチェックの義務化」があります。メンタル疾患の防止の取り組みは、基本的に大きく二段階で構成されています。
まず一次予防として、本人のストレスへの気付きと対処の支援および職場環境などの改善の段階があり、そして、二次予防として不調の状態にある従業員自身の不調の早期発見と早期対応を行うといったものです。
これらの一連の取り組みの要となるのが、対象者の心理的な負担の程度の把握、すなわちストレスチェックです。ストレスチェックの結果の取り扱いの難しさや、運用の負荷などの問題もあり当面は50人以上の事業場が対象となりますが、自殺者数に占める被雇用者・勤め人の数が少なくない(全体の3割近くを占める)ことなどを考えると、この適用範囲であるか否かに関わらず、メンタルヘルスへの取り組みはいよいよ重要になってきている事が伺えます。
●加入しやすい保険料と手続き
保険料は、補償内容が同じ一般の保険に比べ約半額程度に設定されており、業種を問わず多くの事業者が本プランに加入しています。
さらに売上高を基に保険料を算出する仕組みであることから、加入に当たっては従業員数を保険会社に通知する手間がなく、パート・アルバイトが多い製造業・小売業には利便性が高くなっています。また、役員を含め全従業員が自動的に補償対象となることから、中小・中堅や下請けを抱える事業者などに活用しやすい内容になっています。
最近は過労死に対する取締役個人の責任を認める判決も出ました。従業員労務対策はこれまで安全配慮義務の実施、福利厚生といった観点で捉えられてきました。ですが今後は、少子高齢化による労働人口の減少などに対応した人材確保の観点から考える必要があるでしょう。従業員の心身の健康を保つことは企業にとって効率的で持続的な成長への投資と言えるかもしれません。
平成28年2月1日 第2528号 会議所ニュース(業務災害補償プラン)PDF
問合せ先:宝塚商工会議所 中小企業相談所 担当:植村